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【訪問歯科】クレームの対応と対策をわかりやすく解説します【実例・NG集つき】

 

訪問歯科でおこるクレーム内容やその対策を知りたいひと「訪問歯科のクレームってどんなものがあるのかな。どうやって対応したらよいのだろう。クレームをなくすことってできるのかな…。」

 

本記事ではこういった疑問にこたえます。

 

本記事の内容

 

この記事を書いているわたしは歯科医師です。

 

現在、毎日のように介護施設や精神病院、急性期の病院や障害者施設で診察しつつ、大学で高齢者歯科の摂食嚥下の講義と実習を担当しています。

 

今までたくさんのクレームの現場に関わってきました。こういった背景から語ります。

 

Twitterで情報発信しているので、信頼性担保につながれば嬉しいです。

 

 

『日本は10年前、高齢者1人を若者3人で支えていたが、2025年には若者1.8人で支えることになる。
ハイキング帰りの高齢者の方たちが優先席で談笑している目の前で、死んだ目をした若手サラリーマンたちがつり革に身を預けながら立ち寝する姿を見ると、縮図を見ているようで何とも言えない気分になった』

 

【訪問歯科】クレームの対応と対策【具体例】

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そもそもクレームはなぜ起きるか

 

クレームはサービスを受けるときに期待した内容と実際に受けた内容に差があると起こります。

 

事実、病院で起こるクレームの8割以上がコミュニケーションの不足と治療の方針や内容に関してです。

 

訪問歯科では、障害をもつ患者さんや認知症を患っている患者さんも多いです。

 

そのため患者自身の満足度だけでなく、家族や介護に関わるスタッフの満足度によってもクレームが発生しやすくなります。

 

そのため「自分が患者だったらどうしてほしいか」という視点を持ちつつ、改善策や対応策を提示することが大切です。

 

具体例と対処法

 

✔︎ 【訪問歯科で起こるクレーム】

①:治療計画が共有されていない

②:治療中の事故

③:治療費が高い

④:時間にこない、守らない

⑤:言葉遣いや態度、身嗜み

 

直接、患者さんや家族からクレームがあがるケースだけではありません。

 

担当しているケアマネージャーにクレームが届く、ケアマネージャーや介護職員が不審に思っているケースもあります。

 

クレーム①:治療計画が共有されていない

 

治療計画が共有されていないということは、患者さんや家族が知らない状態で治療が進行していることになります。

 

治療期間が長い、治療の経過が思わしくない、知らない間に歯を抜かれた、のようなクレームが起こりやすくなります。

 

 

対策

 

キーパーソンに対する明瞭で分かりやすい説明、患者さんサイドの理解を都度確認 、 文書による提供、日々のコミュニケーション

 

クレーム②:治療中の事故

 

治療中の事故はクレームの対象になります。

 

誘導中の転倒、車椅子の操作ミス、歯や道具の誤嚥、器具による損傷・落下、出血がとまらない、です。

 

 

対策

 

十分に支えた誘導、ベッド上での治療、車椅子の操作覚える、体を起こす、咽頭の確認、物の置き場所や配置のチェック、基礎疾患や服用薬の確認、全身状態の管理

 

クレーム③:治療費が高い

 

治療費については、思っていたより治療費が高かったり、なぜこのような値段だったのかが、クレームになりやすい所です。

 

 

対策

 

キーパーソンへの事前の説明、文書での提供、支払い方法の徹底

 

クレーム④:時間にこない、守らない

 

時間を守らないということは、クレーム対象になります。

 

介護を必要とする訪問歯科の患者さんは、 ヘルパーさんや訪問マッサージの予定が詰まっているので注意が必要です。

 

 

対策

 

時間に幅を持たせる(何時ではなく、何時〜何時)、遅れるときは必ず電話する、ルートの確認や近道の検索

 

クレーム⑤:接遇(言葉遣いや態度、身嗜)

 

言葉遣いや態度身だしなみなど患者さんへの対応はクレームの対象になります。

 

言葉遣いが荒い、 赤ちゃん言葉を使う、横柄または無愛想、清潔感のない服装などです。

 

 

対策

 

丁寧な日本語を使う、尊重する気持ちを忘れない、コミュニケーションをとる、清潔な格好をする

 

クレームは改善のチャンスでもあります。次に生かすようにしましょう。

 

クレームが起こったら 【対応の流れ】

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どんなに対策していても、クレームが起きることはあります。

 

もしクレームが発生した場合どうしたらよいでしょうか。

 

初手が大事

 

クレームが起こった時は初手、初動が大事です。

 

まず責任者に取り次いで対応しましょう。ここでの責任者とは現場では担当の先生、 病院単位としては院長先生になります。

 

なるべく複数で話を確認して、確実に聞き取る体制を作ります。一人で聞くのは得策ではありません。

 

そのうえで、患者さん側の訴えをしっかり聞きましょう。出来る限り経緯をメモしたり録音するのも有効です。

 

分からないことは明確に答えず保留するようにします。

 

間違っても個人情報等は教える必要はありません。

 

病院の落ち度の有無

 

✔︎ 病院の落ち度が明確な場合

 

病院に落ち度が明確な場合はクレーム内容を素直に受け止め謝罪し、改善案を提示します。

 

誠心誠意の対応が、医療人としての対応です。

 

診療内容に関するものは賠償責任保険等による賠償も検討するべきです。

 

 

✔︎ 落ち度がない場合

 

逆に病院に落ち度は無い場合は、毅然と対応します。

 

誹謗や中傷、脅しなどの類にも、いかなる請求にも応じない胸を見せることは重要。

 

その場を丸く収めるためには話し合いは重要ですが、謝罪をすることで突っ込ませる材料を相手に与えてしまうことになる場合もあるので注意してください。

 

その場が治らないときは、後日回答する、返事を保留することも一つの手段です。

 

 落ち度が明確ではない…とき

 

落ち度が明確でないときは態度を保留します。

 

適当に答えたり前に回答してしまうよりは一度持ち帰るという選択が賢明です。

 

その場で判断がつかなかったり、責任の所在等を確認することが難しい状況もままあります。

 

立案と予防対策

 

クレームへの対処に関する立案、具体的な予防対策を考えます。

 

このような事例に真摯に向き合うことで、人としても病院としても成長するチャンスです。

 

起こった情報を共有し、具体的な対処方法を考え、それをスタッフで共有しましょう。

 

今は厳しい状況でも、必ず今後に活かすことができます。

 

これからの似た事例に迅速に対処する、過ちを犯さないようにすることができます。

 

こんなクレーム対応はNG

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❶:言い訳をする

 

言い訳は逆効果です。

 

「入ったばかり」「よくわからない」は相手の気分が悪くなるだけで、何も進展がありません。

 

「しかし」「でも」「だって」などの逆説の接続詞もNGです。

 

 

❷:面倒そうな態度で接する

 

面倒そうな態度は相手を逆撫するだけです。

 

クレームに対応するときは真摯な態度で対応するようにしてください。

 

本気の対応が、相手の心を解放していくのです。

 

 

❸:ひとりで対応

 

一人で対応するのはやめましょう。

 

言った言わないになりかねません、暴力等の危険もあります。

 

 

❹:メモをとらない

 

記録に残さないことに何のメリットもありません。

 

かならずメモを取るようにしましょう。

 

言った言わないになる可能性を防止できますし、記録しているという行為が冷静さを取り戻すきっかけになります。

 

 

❺:落ち度があるのに対策しない

 

落ち度があるのに対策や対処をしないことはデメリットしかありません。

 

クレームは問題を解決するきっかけとなるものですので、落ち度がある場合は対策を迅速におこないましょう。

 

情報を共有し、再発防止につなげましょう。

 

クレームをゼロにするのは難しい

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クレームをゼロにすることは難しいです。

 

なぜならクレームとは、患者側から問題解決を要求するものだからです。

 

そのため患者さんと病院という関係がある限り、クレームは存在します。

 

ちなみに苦情はただ不満を訴えることなので、区別して考えましょう。

 

以前入れ歯を作ってほしいという認知症の患者さんがいて、まず残っている歯をしっかり治してから作りましょう、という治療計画を話したことがあります。

 

私の説明不足もあり患者さんとしてはすぐに作ってくるものと理解されていましたので、まだできないのかと不満に思っていました。

 

自分の歯を治してから入れ歯を作る必要性とメリットを何度も説明しました。

 

結果、入れ歯を作ってしっかり噛めるようになってから、とても友好的な関係になりました。

 

このように、一度クレームを入れてきた患者さんは逆にファンになってくれることもあります

 

とはいえ毎回こういう風に解決できるわけではない、と考える人もいると思います。

 

もちろん全員が全員友好的な関係になるわけではありませんが、誠実に対応することで不満が和らいでいくのは間違いありません。

 

繰り返しになりますが、クレームをゼロにすることは難しいです。

 

対策をすることで減らすことはできます。

 

まず内容を把握しそれに対して、予防策を立案するというプロセスが大切です。

 

起きたクレームをフィードバックすることで、再発防止や対応方法を洗練されていきます。

 

クレームはゼロにすること自体が目的ではありません。前向きにとらえつつ問題解決のきっかけにしましょう。

 

今回は以上です。

 

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